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【全体会】鼎談「つながりをふたたび~コロナ後に再構築したい地域とは」

2024/05/10レポート

【全体会】鼎談「つながりをふたたび~コロナ後に再構築したい地域とは」
コロナ禍で見えた地域社会の課題と新たに生まれた助け合いの仕組み

 

 

「じぶんの町を良くする会議 第13回 赤い羽根全国ミーティング in信州」1日目の鼎談は、400人以上の参加者の期待の中でスタートしました。

 

人と会うことが避けられたコロナ禍で、臨時休校中の子どもを支援する全国キャンペーンや、居場所を失った人たち、在日外国人、重症児を支援する活動などニーズの変化に柔軟に対応して支援を重ねてきた共同募金事業に焦点を当てて、「つながりをふたたび~コロナ後に再構築したい地域とは」をテーマに事例報告などがありました。

 

最初に、コロナ禍前からこども食堂や居場所づくり、フードパントリーなどに取り組んでいた豊島子どもWAKUWAKUネットワーク理事長の栗林知絵子さんが、コロナ禍で学校が休校になった子どもたちへの食料支援を始め、共同募金の助成金を得ることで仕事を失ったひとり親家庭や居場所を失った人を支援することができたと報告。「小学校区内9か所に屋外の拠点ができ、地区の民生委員や飲食店などの協力もあって弁当と食材などを子どもたちに手渡すことができた。行政も緊急基金を集めて、お米を渡そうと動き出していたので、これに協力して、これまでつながっていなかった人たちともつながり、区全域で支援することができた」とコロナ禍での活動を振り返りました。

また、要支援家庭の子どもたちを訪問してお米やお菓子を手渡して支援を届けるプロジェクトでは、「直接出会って関係をつくることで、子どもたちの成長を喜べた」、「『家賃が払えない』と聞き、住まいのサポートも始めた」、「区内の企業も協力して、子どもが暮らしやすい豊島区をつくる動きにつながっている」といった取組の広がりを話しました。

さらに、「無関心でない社会をつくる」ため、何かをしたい人が参加できる仕組みも必要と考え、「おせっかいさん募集」のチラシを張り出し、「地域の人を巻き込んで『おせっかい』の力をつないで連携して、子どもを大切にする社会、孤立しがちな人がみんなに応援され育っていく地域をめざしている。取組が発展するほどに巻き込まれる人も増え、できることもさらに増えていく」と、これからの展望を話しました。

 

中央共同募金会会長の村木厚子さんは、「崖に立っていた人を崖の端に追いやったようなコロナ禍が社会と地域のいろいろな問題を見せてくれた」と話し、「じぶんの町を良くする」という草の根の地域の活動がどれほど大事かを振り返りました。孤立感を抱えていた子育て世帯でサークルをつくって助け合った結果、自分たちのためにはじめた活動が地域での活動を通して、地域のために力を発揮できるようになったこと。点の支援だけでなく、地域の社会資源を生かす関係者のネットワークをつくる面の支援が大事なこと。0を1にするのが現場の仕事で、それに学者が理論を加えて10にし、企業が協力して50にし、行政が制度にして100にするような広がりが必要なこと。

また、「必要だと思ったら、すぐに実行できるのが民間の圧倒的な強さで、これが大事と信じたところにお金を提供できるのが赤い羽根の強み」とアピールし、「募金は誰でもできるボランティアで、忙しい人でもできる。でも、それだけではワクワクしない。どうしたら主体的にワクワクする募金になるかを考える。お金を集めると同時に、仲間を増やすことができれば、たくさんの人を巻き込んで活動を大きくできる」と、参加者に呼びかけました。

 

ルーテル学院大学名誉教授の和田敏明さんは、知り合いに「12月の終わりに家族で『どこに募金したいか』をプレゼンしあって、正月を迎える」という「ワクワクする文化」を見習いたいと紹介しました。

また、「コロナ禍は本当に大変な経験だった。今まで見えてこなかった地域社会の問題を見せてくれた。生活の不安や不安定さが明らかになった。社会的孤立の広がりと深まりが、心身にも深刻な影響を与えている」とし、「コロナ禍を経て、これからどういう社会をつくっていったらよいか」と問題を提起。

「人口減少で、ひとり暮らしの高齢者も増えていく中、社会的な孤立状態にあると健康の維持も難しくなる。コロナ禍で明らかになった新しい課題に対して、みんなが協力する仕組みも次々に生まれてきた。新しいNPOが誕生して、社会参加の場と収入を得る場も生まれてきている。高齢者が社会参加することで生きがいになり、フレイル予防にもなって健康を維持することができる。共同募金は、お金を集めて助成し循環させるすばらしい仕組みを持っている。さまざまな人と協力し、力を合わせてこれからの社会をつくっていきたい」とまとめました。

 

登壇者

和田 敏明 さん(ルーテル学院大学 名誉教授)

栗林 知絵子 さん(豊島子どもWAKUWAKUネットワーク 理事長)

村木 厚子 さん(中央共同募金会 会長)

熊谷 有祐 さん(中央共同募金会 運動推進部長)

 

取材・執筆 ナガクルソーシャルライター 吉田百助

 

鼎談登壇者の3人

鼎談登壇者の3人